キリギリスとコオロギに ジョン・キーツ
地上の詩は決して死なない
すべての鳥たちが灼熱の太陽に滲んで消え
冷たい木々に隠れるとき、〈声〉は響き渡るだろう
刈り立ての牧草地を巡る生垣から
The Poetry of earth is never dead:
When all the birds are faint with the hot sun,
And hide in cooling trees, a voice will run
From hedge to hedge about the new-mown mead;
それはキリギリスの声 眩い夏へと導く
彼は喜びの歌をやめない 歌い疲れたら楽にして
足下の快い草で休む
That is the Grasshopper’s—he takes the lead
In summer luxury,—he has never done
With his delights; for when tired out with fun
He rests at ease beneath some pleasant weed.
地上の詩は決して終わらない
さみしい冬の黄昏 精巧な沈黙
ストーブに在るコオロギの鋭い歌
でも暖かさは増し続け まどろみにいる人には
草深い丘のキリギリスの歌みたいに思える
The poetry of earth is ceasing never:
On a lone winter evening, when the frost
Has wrought a silence, from the stove there shrills
The Cricket’s song, in warmth increasing ever,
And seems to one in drowsiness half lost,
The Grasshopper’s among some grassy hills.
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高らかに天を舞い美しい歌を歌う鳥たちが消えた時、地上の歌は、キリギリスの、怠け者の歌は必要とされる。
厳しい冬の季節には同じく地上に住まうコオロギが鋭く歌う。しかし、まどろみ=夢を通じて、コオロギからキリギリスへの、厳しい冬から眩い夏への回路が開く。
夏が冬になるのではなく、冬が夏になるのでもない。季節がそう呼ばれるだけで、歌も同じだ。目の前にあるものは仮相で、その奥には実相がある。
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The poetry of earth is never dead.
この言い切りの気持ちよさ。
faint かすかな
太陽の光で鳥が見えなくなるようなビジョンを、滲んで消えとした
mead 牧草地
meadowの古語
tired out with fun
全力を出した心地よい疲労感、というところか
歌い疲れたらとした
wrought a silence
wroughtには(神のなせる)業、という意味があるとのこと
https%3A%2F%2Fondairon.com%2Fblog%2Fwrought%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E8%AA%9E%2F
精巧な沈黙! おおげさに言えば彫琢された沈黙! 素晴らしい。